(SFN5月号掲載分)
クラッシックタックルを楽しむ、という行為の中で、やはり一番の楽しみはキャスティングする楽しみである事は間違いないでしょう。釣りという行為、特にルアーフィッシング、とりわけトップウォーターゲームにおいては、キャスティングの重要性は絶対的に大きなものであり、この行為そのものの良し悪しが釣果の大半を左右するといっても過言ではないのです。つまり最も重要な要素であり、だからこそココには楽しめる要素がいっぱい詰まっているのです。もちろんハイテクタックルを使っても、そこには同等のキャスティングする楽しみは存在するのですが、より便利になり、自動化されたそれらの道具には、本来あったはずの物が少なくなってしまったり、もしくは欠損してしまっていたりするのです。言い換えれば、クラッシックタックルにのみ存在する不便さ、不自由さの中にこそその楽しみが隠されているのです。
これがいわゆる前回にもお話した心地よい不自由さなのです。
まあ、当たり前の事をするだけのことなのですが、ハイテクタックルにおいてはその当たり前のことをしなくとも結果がともなってしまうものなのです。最も分かりやすい部分がサミングテクニックであり、クラッシックタックルにおけるそれは、確実に要求されるものである一方、ハイテクタックルにおいては多少怠ったとしても何事も無かったかのようにキャスティングできてしまうことでしょう。クラッシックタックル、とりわけダイレクトリールに関しては、さらに使うルアーのタイプによってもサミングの強弱などの微調整が必要になってきます。ペンシルベイトは軽めのサミングで、ハネ物やリップ物のような空気抵抗の大きいものは強めのサミングで・・・など等、ルアーの飛行特性なども理解しなければいけないのです。一見すれば面倒くさい作業なのですが、これが本来のサミングテクニックなんです。リール性能が向上し、誰もがストレス無くベイトキャスティングリールを使えるようになった昨今ですが、それとともに本来のサミングを忘れてしまっているんですね。トーナメントシーンなどでの使用ならまだしも、趣味としての釣りを楽しみたいのであれば、ぜひこの本来のサミングを楽しんでいただきたいものです。逆にこの本来のサミングに慣れれば、キャスティングの精度は確実に上がる事でしょう。だって、スプール、ハンドルの回転が自らの手や耳を通して体感できるんですから間違いないです。その情報量は今のリールとは比べ物になりません。五感を研ぎ澄まし楽しむキャスティング!そこには心地よい不自由さがあるのです。ぜひチャレンジして頂きたいものです。
一方で、半世紀も前の当時から、バックラッシュの解消というのは大きな課題であったのも確かなようです。
写真のサウスベンド“アンチバックラッシュ”システムのように、レベルワインダー部分にセンサー的な機構を組み込み、着水と同時にスプールの回転を強制的に止めてしまうものなど、いろんなブレーキシステムがこの当時から試行錯誤され繰り返し生産されてきたのです。どれもみな十分なものではないのですが、そんな一つ一つの努力が今につながっているんです。
古きを知ってこそ、今の便利さが分かる。そんなもんです。
ではまた次回をお楽しみに!