ギアについてのお話。
(SFN7月号掲載分)

ギアについてのお話。

ダイレクトリールユーザーから良く受ける質問のひとつに「プラスチックギアーって大丈夫?」というのがあります。確かにそうなんです。当時の巨大メーカーのひとつシェイクスピアでは、後期のモデルのほとんどにプラスチック製のギアを採用しているのです。まあ、金属製の物と比べれば頼りな〜いイメージを持ってしまうのも無理はありません。イメージ的には本物の硬貨と、子供銀行のプラスチック硬貨の違いくらいあるのでしょうか???という事で今回は、このギアについて実際の所どうなのか?というお話をさせていただくことにしましょう。


いちばん一般的に使われているのがこの真ちゅう製ギアです。
やはり、もっとも加工しやすく安定感のある素材のようです。

 さて、大きく分けるとギアは3種類の素材で作られておりました。もっともポピュラーなのが真ちゅう製、次いでアルミ製とプラスチック製ということになります。ざっと見渡すとほとんどが真ちゅう製のギアで出来ており、先に述べたシェイクスピアのプラギア、ラングレーの一部でアルミギアが取り入れられているのみで、裏を返せば真ちゅう製のものがもっとも加工しやすく安定感のある素材だったといえるでしょう。では、なぜその2社に限ってアルミギアやプラギアに取り組んだのか?という事になります。答えは一つ、やはり軽量化を求めた結果に違いありません。ダイレクトリールの場合はとくに、駆動系の重量がそのまま使用感に反映しますので、とても重要なことなのです。軽快な使用感を求めるが故の答えだったのでしょう。さらに、当時どういった製法で生産されていたかは分かりませんが、プラギアに関しては生産効率を上げ、コストを下げるというメリットもあったのでしょう。

 では本題です。プラスチック製のギアは壊れやすいのか?個人的な意見ではありますが答えさせていただきましょう。もちろん厳密には分かりませんし、統計をとったわけでもありませんが、さほど大きな差は無い様に感じます。事実お店に持ち込まれるトラブル例を見渡してみても、3種類のギアそれぞれでほぼ同じようにトラブルは発生しているのです。まあ、結局は使い手の問題であり、ある程度の節度をもって接していかないと、限界点を越えてしまえばどれでも一緒ということになるのです。もっとも安定感があると思われる真ちゅう製のギアでも、ピニオンギアがとんでも無いカタチにひん曲がっていたりと、信じられないトラブルも見受けたりするのです。そりゃそうですわ。50ポンド60ポンドのPEラインを使って、力任せにグイグイやれば、それはつまり20〜30キロの力がかかるわけですからね・・・。無理をすれば間違いなく壊れます。そもそも華奢な造りのダイレクトリールはそんな力に耐えうる構造にはなっていないのです。その点充分自覚したうえで接していただきたいものです。オーバースペックのラインを使っているんだ!ということをお忘れないように。

 ここでさらに、それぞれの素材について特徴をまとめてみたいと思います。

@     真ちゅうギア・・・加工しやすく最も多く使用されている素材で、金属的にもある程度の粘りもあり、使うごとにギア同士がなじみ、使用感が向上するといわれております。繰り返しになりますがもっとも安定感のある素材といえるでしょう。

ラングレー“ストリームライト”の内部構造です。
たったコレだけです。
なんて上手くまとめてあるんでしょう。
ちょっとグリスで汚れてますけどね・・・。

A     アルミギア・・・真ちゅうと比べ重量的に軽く、駆動系の軽量化にはプラス材料となります。ただ、真ちゅうと比べると変質しやすく、使うごとにギア同士の馴染みが向上することは期待できず、つまりパフォーマンスは低下して行くとも考えられます。よって、よりこまめなメンテナンスで対処することが必要となるでしょう。

コレはラングレーの“スピーディー”の内部構造です。
真ちゅうとアルミのパーツが合わせて使われております。
しかしシンプルな構造ですね・・・。

B     プラスチックギア・・・質量的に最も軽量なのは言うまでも無く、ギア同士のかみ合いも滑らかで、スムーズで軽快な巻き心地を味わうことが出来ます。よって、上記の金属ギアに比べ静粛性も向上します。ただ、異物の混入に対してはきわめて弱く(小石など)、ギアの山がつぶれ易いのは否めません。また、経年変化による劣化も大きいと考えられます。

こちらご存知シェイクスピアのプラギア。
コレだけ大きなギアを真ちゅうで造ったらかなり重くなってしまいます。
そこでプラスチック製のギアが採り入れられたのでしょうか?
けど、言うほど弱いものじゃないですよ!

結局のところ、それぞれの素材にメリットデメリットがあり、どれも完璧ということは無いのです。ましてや半世紀以上の月日を経ているわけですから、その間どうやって使用され、またどのように保存されてきたのか・・・?によって状況は変わってきてしまうでしょう。「カタチあるものはいつか・・・。」少なくともこの割り切りは必要でしょうね。とにかく!道具としての命が途絶えるまで出来る限り大事にしてやってください。

愛をもって接すれば答えてくれる道具・・・それがダイレクトリールなんです。